プラトンの洞窟

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プラトンの洞窟

On 7月 29, 2016, Posted by , With プラトンの洞窟 はコメントを受け付けていません

アーテン:お母さんに読んでもらったプラトンの洞窟の比喩を聞かせてくれないか。きみがどれくらい覚えているか知りたいから。

ゲイリー:そうだな、そうとう変な話だったよ。きみたちの訪れほど変じゃいけどさ、でも・・・ぼくのの記憶じゃ、洞窟のなかに囚人がいるんだよ。しっかりと鎖につながられているんで、振り返ることも、視線を動かすこともできない。彼らに見えるのは目の前にある洞窟の壁だけ。でも記憶にある限りずっと洞窟にいるから、知っているのは洞窟のなかだけなんだ。目の前の壁には影が映っていて、音が聞こえる。それがすべてなので、彼らは自分たちが見ているものが現実だと考えている。すごく惨めで哀れな話だけど、当人たちはそれがあたりまえだと思い、けっこう快適なんだ。
 ついに囚人たちの一人が自由になって、後ろを振り返り、自分たちは洞窟にいると気づく。入り口の向こうからは光が射している。目が光に慣れるのには長い時間がかかるんだが、入り口のほうへ行ってみると、外の道を人々が歩いていて、その人たちの影が洞窟の壁に映っていたんだとわかる。
 自由になった囚人は、洞窟の囚人たちは自分たちが見ているものが現実ではないことを知らないんだと気づいて、洞窟に戻って自分が発見したことを教えようとする。だが囚人たちはこれまでの考え方に慣れきっていて、自由になった者の話を聞きたがらない。それどころか、逆に彼を殺そうとする。この物語はこういうことを言いたいんじゃないかな。人は自分たちが自由を欲していると思っているかもしれないけれど、じつは自分の見方を捨てるのは嫌なんだって。

アーテン:ご苦労さん。お母さんも喜ぶと思うよ。プラトンの話に戻ると、自由になった者というのは彼の先生であるソクラテスだ──ソクラテスは実際に毒を強要されて処刑された。ほかにも人々に世界を捨てて立ち上がれとチャレンジした大勢のすばらしい教師たちがいるのは知っているね。そしてその過程で身体を殺された者も多いが、じつはそんなことはどうでもいい。プラトンが洞窟の物語で教えようとしたとおり、きみたちの現実はきみたちが思っている者とはぜんぜん違うからだ。
 プラトンはたしかに偉大だったが、その影がほんとうはどこから射しているのかを知らなかった。だが、きみにはわかるよ。プラトンは光が「善」からきていると考えた。象徴的な言い方としては真実だ。しかし彼はまた、人々が生涯、肉体的な目で見ている影は、それぞれの完璧なイデアが投影されたものだと考えていた。だがそうじゃない。Jは影のほんとうの原因を知っていた──それにどうすればいいかも正確に知っていたんだ。それをきみに教えてあげようというのさ。
 Jの現実は世界の現実とは違っていたと理解しておくと役に立つよ。彼は幻想のなかにはいなかった。夢から醒めたときには、もう夢のなかにいないのと同じだ。ときには夢を現実として体験するかもしれないが、現実じゃない。きみはJを自分の夢のなかに引き込みたいと思うかもしれないが、Jにはもっといい考えがある。彼はきみ目覚めさせて、一緒に連れて行こうとしている──完全な夢の外、プラトンの洞窟の外へだ。すべての限界や障害を超えた外へだよ。きみを自由にしたいんだ。
 きみはよく、もっと愛情豊かな人になるように努力しなくちゃいけない、Jの愛というお手本のように、と思っていたね。でも間違いだ。ほんとうに彼や神のような完璧な愛を実践したいなら、学ばなちゃいけないのは(聖霊の助けを借りて)きみが自分と神のあいだに置いた障害を打ち破ることだ。そうすれば自然に、また不可避的に真の自分に目覚めるよ。
 自分の人生から争いを追放したいというきみの決意は立派だ。それによって速習コースに進める心の状態ができた。求めれば最先端の霊性が獲得できる──それを学ぼうという意思が続くかぎりはね。われわれが分かち合おうというJの教えは万人向きじゃない──少なくとも線型の幻想のなかにいる全員がただちに会得できるものじゃない。だが、きみならできる。それはきみ自身がわかるはずだ。もしわからなければ、いつでもそう言ってほしい。われわれは来るのをやめるよ。われわれは神からの命令を携えてきたんじゃない。きみはまだ信じたくないかもしれないが、神は人々に命令はしない。ここで起こっていることは神の意志だと思うかもしれないが、その点ではきみも世界も間違っている。ここでつねに起こっているのはべつのこと──はっきり言うなら、神ときみたちとの別離だ。われわれはきみが彼とともにある現実に戻る手助けをしたいんだよ。
 きみと神の交流と思われるものは、じつは分裂したきみ自身の無意識の心どうしの──自分の現実を忘れているきみの一部と、聖霊が住む一部との──交流なんだ。彼は決してきみから離れたことはない。彼の声(そのうち、その声の聞き方を学ぶはずだが)は神の記憶──きみの真のわが家の記憶だ。この声はきみが長いこと忘れていた現実を表している。そこできみは選び方を学ばなくてはいけない。プラトンの話にある洞窟の囚人のように、きみもその選択に大きな抵抗を感じるだろうがね。学ばなくてはいけないのは、ほんとうのきみを代表する者である聖霊と、偽りのきみを代表するきみの心の部分と、どちらを選ぶかってことだ。その選び方がわかれば、長いあいだ閉じ込められていた無意識の心のがついに解放される。だがそれを自分一人で実現しようと思っても、文字通り不可能だ。もちろん、やってみるのはかまわない。でも助けを借りれば、うんと時間が節約できるよ。

出典:神の使者 P120~123

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